「生物研究の集い」の際のプリント
Laohです。先日の「生物研究の集い」の際、発表要旨集に掲載した内容のレポートを、ほぼそのまま記事にして、公開したいと思います。
詳細な採集ポイントは、採集地保護のために非公開とさせていただきました。
図の番号がおかしかったり、継ぎはぎなところがあるかもしれませんが、特に気にせず読んでください。
多摩川に生息する魚類の定点観察調査
桐朋高校X(Xは1≦X≦3を満たす整数)年 Laoh
○はじめに
○調査方法
調査は実際に川に入って魚類を採集し、その種類、数を調べるという方法をとった。調査をする際は主にタモ網を使用し、深くなっているような場所では釣りを行ったり、罠を使用したりして、できるだけ様々な環境に生息する魚類が調査できるようにした。
○調査地点
調査を行ったのは、(上流から)???橋周辺、??橋周辺、????橋周辺、????堰周辺の4地点である(図1参照)。???橋、??橋、????橋は2008年から調査を行っている場所で、????堰は2010年から調査を開始した。また、??橋周辺で調査する際は、本流の流れが強いため、脇の細流で行うことが多かった。
○調査結果・考察
上流の調査地点から順に、調査結果をまとめた。
※表中の記号について
◎…多数の生息を確認 ○…普通 △…少数の生息を確認 ×…確認できず
【図3】??橋周辺の調査結果
・冬は本流の水位減少に伴い、タカハヤやアブラハヤも減少。
・2010年から毎回カワムツが確認された。本種は国内移入種なので、今後注意して観察していこうと思う。
・シマドジョウ、ホトケドジョウは脇の細流で成魚を確認。ここで繁殖まで行っているようである。
・カジカは、本流に成魚、細流に稚魚の定着を確認。本流で生まれた稚魚が、細流に逃げ込んでいるようである。
・2009年にギバチを確認したが、大型個体がいなかったことなどから、ここに定着しているわけではないようである。
【図4】????橋周辺の調査結果
・この場所には様々な環境があり、魚の種類が豊富であった。
・オイカワは素早いため、捕獲できたのは少数であったが、実際には本流の深い場所などにそれなりの数が生息しているはずである。
・関東地方のジュズカケハゼは、LP(絶滅の恐れのある地域個体群)に指定されているが、この場所では年々増加していく傾向にある。
・ギバチは年々大型個体が増加しており、この場所で成長しているようである。
【図5】????堰周辺の調査結果(2010年のみ)
・秋川との合流地点に近いことと、4地点の中では最も下流なため、魚種が非常に多かった。アカザやギバチ、ジュズカケハゼといった、貴重な在来種が生息している半面、オヤニラミ、ムギツク、スゴモロコといった国内移入種や、外来種であるコクチバスが生息していたため、在来種が危険にさらされていると感じた。
・アユ、ヤリタナゴは放流されたもの。アユは毎年遡上が確認されているが、ヤリタナゴに関しては、産卵母貝がないため、繁殖までは行えていないと考えられる。
○まとめ
2008年から記録を取り始めた多摩川の生態調査であるが、毎年やっていくうちに現在の多摩川の状況についてわかってきた。最上流地点の??では未だ国内移入種や外来種は見つかっていないが、??では国内移入種のカワムツが見つかるようになった。また、??ではカワムツの定着が確認されており、さらに下流の????堰ではカワムツだけでなく、より生態系へのダメージが大きいコクチバスやオヤニラミといった種類を確認した。さらに下流に行くと、より多くのコクチバスが生息しており、今までに見つかった外来種は数百種類にも及ぶという。つまり、下流に行くほど国内移入種や外来種が多くなる傾向にあり、年々上流にも侵出してきているということである。しかしその反面、毎年ジュズカケハゼの数は増えているし、ギバチも大型化してきている。簡潔に書くと、「貴重な在来種は増えてきているが、外来種や国内移入種の侵出によって、生息環境がいつ失われるか分からない」というのが現在の多摩川の状況だろう。かつて「死の川」と呼ばれた多摩川は現在も再生を続けているようだが、今度は外来種の問題に目を向けなければいけないと感じた。
○ご協力いただいた方々・参考文献
・奥多摩漁業協同組合の方々
・川崎河川漁業協同組合、お魚ポストの会代表 山崎充哲様
・ヤマケイポケットガイド⑰淡水魚(山と渓谷社)